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更新日:平成23年3月15日
水の中に生きる生きものたちは水およびその他の特殊な環境条件に適した体のつくりをもっています。ここでは魚類だけについて述べますが、甲殻類(こうかくるい:エビ・カニ類のこと)や貝類などについてはそれぞれの専門の解説書を見てください。 魚の体は3つの部分に区別できます。頭から鰓蓋(えらぶた)の末端までを頭部、そこからおおよそ肛門(こうもん)までを胴部、それより後を尾部といいます。 右の図に魚類の各部位や計測位置を示しました。魚類は左側に頭を置き、腹側を手前に置いた状態で見るのが一般的です。魚の大きさは頭の先から、尾鰭(おびれ)の先(実際は尾鰭をつぼめて最ものびるところまで)までを全長といい、尾鰭の基部の脊椎骨(せきついこつ)の末端までを体長といいます。本書では魚の大きさはすべて体長で示しています。 魚には鰭(ひれ)があり、その種類や数、各鰭を構成する棘(とげ:固く枝分かれしていない)や軟条(なんじょう:軟らかく枝分かれしている)の数は、魚の種類を特定する上での重要な形質のひとつです。 一般に魚には背中に背鰭(せびれ)、尾に尾鰭(おびれ)、胸に胸鰭(むなびれ)、腹に腹鰭およびその後方に臀鰭(しりびれ:解説では尻びれと表記)がついています。このうち胸鰭と腹鰭は一般に左右1対あり、他の鰭はそれぞれ1枚です。 ただし、前頁右下の図に示したように、油鰭(あぶらびれ)という棘や条のない鰭をもつものがあったり、背鰭も前後2つに分かれていたりするものもあります。また、腹鰭がなかったり(ウナギ)、胸鰭が合わさって吸盤になっている(ハゼ類)ような特殊化した魚もいます。 大多数の魚の体は鱗(うろこ)でおおわれますが、ハゼ類の一部やアユカケなどカジカ類には鱗がありません。ウナギやドジョウは、一見鱗がないように見えても実際には細かい鱗があります。またたいていの魚には体側に沿って穴の開いた鱗がありますが、これは側線(そくせん)と呼ばれる感覚器官の開口部です。感覚器官は頭部にもあり、その分布はカワアナゴ類のように種類を決定する決め手となることもあります。 魚にはさまざまな体色があり、オスとメス、成魚と幼魚とで色彩が違うこともまれではありません。とくに繁殖期に特有の色彩を示すものがあります。これを婚姻色(こんいんしょく)と言っています。またオイカワやモツゴなどのように婚姻色に彩られた繁殖期の雄では、頭部などに白色の突起ができ、これを追星(おいぼし)と言っています。 体のもようのうち、頭から尾までの縦軸に沿う線状のもようで、太いものを縦帯(じゅうたい)、細いものを縦条(じゅうじょう)といいます。また短いもようは斑紋(はんもん)といい、縦軸に長いものを縦班(じゅうはん)、背から腹方向のものを横班(おうはん)といいます。ごく小さいものは斑点(はんてん)です。 魚の呼吸は鰓(えら)によって行いますが、鰓は頭部の鰓蓋(えらぶた)をめくると、のぞくことができます。ひとつの鰓は弓状に曲がっており、外側の赤い部分を鰓弁(さいべん)、内側の白い部分を鰓把(さいは)といいます。鰓弁はガス交換をするところ、鰓把は食物をこし取るところです。 |