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更新日:平成23年3月15日
異常気象の原因
- 1.上空に運ばれた大量の水蒸気
- 本州付近に停滞している前線に、南海上から北上してくる台風が湿った温かい空気を大量に流し込み、大雨を降らせた例はこれまでたくさんあるが、七夕豪雨もこの例にもれず、停滞前線と台風第8号が大雨の原因であった。
南海上の太平洋高気圧から日本海に進んだ台風第8号に向かって、湿った温かい空気が流れ込む典型的な気圧配置となっている。これを850hPaの天気図で見ると、更にこの模様がはっきりと現れており、静岡県付近上空には南海上から20m/s以上の強い南西風が吹き込んでいるのが見られる。
静岡県付近に大量の雨を降らせた要因の1つは、このように南海上から運ばれた大量の水蒸気であったと考えられる。
- 2.前線の東進を阻止した冷気の流入
- 台風経路図によると、台風第8号は7月6日9時にかけ、北東進しているが、本州中部にある前線は、東進速度が非常に遅く、1時間に10~15kmしか動いていない。
前線の東進速度が極端に遅かった原因としては、日本の東海上から中部地方に流れ込んだ冷たい気流が考えられる。7日21時の地上気温の分布図を見ると、三陸沖から南西に舌状に冷たい空気が、関東の北部を通り東海地方へ流れ込んでいる模様がよく示されている。
豪雨が長時間続いた最大の原因は、前線がほとんど停滞していたためであり、その要因は顕著な冷気の流入であったと考えられる。また、この冷気の流入は前線を強化した大きな要因でもあった。
- 3.地上天気図には現れない湿舌
- 7日21時の700hPaの乾燥域と湿潤域の分布図を見ると、八丈島付近から南西に広がる上空大気の乾燥域と、また別の乾燥域が、九州の西方海上から日本海西部へ延びている。
一方、この2つの乾燥域に挟まれたように四国の南海上から紀伊半島を通り、静岡県付近から関東へ延びる湿った空気が明瞭に現れている。この湿ったところを湿舌(しつぜつ)と呼んでおり、この湿った帯状の地域に、南海上から強い雨雲の塊が次々と入り豪雨をもたらせた。湿舌による代表的な大雨として長崎豪雨がある。