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まるで9月まで続いた今夏の暑さの反動のごとく、厳しい寒さの続く毎日ですが、皆さまお元気でお過ごしでしょうか。
この時期にはマスコミなどで、「この1年を振り返って」という話題がよく取り上げられますが、今回の私のこのページでは、私どもの業務に関連する事項について、この1年を振り返ってみます。
この一年を振り返ってみますと、まず昨年と大きく異なるのは、全国的にも本県においても、地震や大雨による災害の発生が少なかったことではないでしょうか。
特に昨年は、3月11日に発生した東日本大震災と福島原発の事故が歴史的なもので、未だに処理完了の目処が立たない状況にあるほか、全国的に大雨や台風などによる災害が多発し、本県においても台風6号、12号、15号などの大雨や強風による被害は、近年にないほどの箇所数や規模となりました。
それに比べて今年は、私どもの事務所でも大雨や洪水の被害件数は本当に少ないものでした。ただ、1箇所、昨年から明瞭に動き始めた大規模地すべりの現場があり、今年になってようやく国の採択をいただくことができたため、被災額としては今年もかなり大きな額に達しました。
「えっ、昨年動いた地すべりの対策事業を、今年になって国が採択をする?のんびりし過ぎではないの?」という声が聞こえてきそうです。採択が今年になった理由を以下に説明します。
その現場は県道藤枝黒俣線の藤枝市瀬戸ノ谷地内(蔵田地区)ですが、昨年明瞭に動いた地すべりがその後小康状態となったために、滑っている土砂の範囲や深さがなかなか確定できず、今年の夏の雨でようやく確定できたためです。地すべり災害は、その範囲や深さが分からないと的確な対策が決められないということは、平成23年12月22日のこのページで少し詳しくお話ししました。よろしければ、そちらもご覧ください。
この地すべりは幅130m、斜面長355m、深さ37mの大規模なもので、その面積は4ha、すべり土塊量は85万m3に及びます。今年になってその規模が確定できたため、対策工法を検討、設計し、国の災害復旧事業採択をいただいたものです。今後、2年余りの工事期間と20億円近い工事費をかけ、2度と動き出さないように対策を講じる計画です。
次に、大きな出来事としては、4月14日に、新東名高速道路の静岡県内162km区間が開通したことです。
新東名の効果は、ゴールデンウィークやお盆の期間に東名の渋滞がほぼ解消されたことや、交通事故が激減したことが直接的な効果として上げられますが、新東名は東名に比べて耐震性がさらに強いことや、県内中山間地域の活性化に対する効果が期待できること、高齢化した東名の大規模補修がこれまでほど交通規制渋滞を心配しなくてもできるようになったこと、などの効果があります。
新東名の話題は、平成24年4月23日、平成24年5月11日のこのページでも詳しく取り上げました。よろしければご覧ください。
8月5日には海と陸の広域交通拠点である、御前崎港コンテナクレーンの更新と地域高規格道路「金谷御前崎連絡道路」大沢インターチェンジの立体交差化完成を祝う式典が、合同で開催されました。
これらの話題は平成24年8月7日のこのページで詳しく触れましたが、「金谷御前崎連絡道路」は静岡県が、新東名島田金谷ICと東名相良牧之原IC、御前崎港、富士山静岡空港という陸・海・空の広域交通拠点を結ぶ道路として、接続する道路との交差を極力立体化して円滑に通行できる道路を整備しているものです。総延長約30kmのうち、未整備区間は3.3kmのみとなっており、現在、その整備を精力的に進めています。
この道路は、単に移動が円滑、短時間になるだけでなく、地域の活性化や東海地震などに対する緊急防災道路の面からも期待が大きい道路です。一日も早い全線開通に向けて、今後も、頑張っていきます。
10月17日には、大井川を跨ぐ「はばたき橋」の大井川右岸取付道路(島田市地内)の工事に関連し、県道予定地(県有地)内にある物件撤去の行政代執行が開始されました。
国道150号富士見橋や、県道島田吉田線の谷口橋および島田大橋の渋滞緩和・解消と、藤枝市や焼津市方面から富士山静岡空港へのアクセス道路としての効果が大きなはばたき橋を、1日も早く開通させるための苦渋の選択です。
代執行の完了は来年1月末の予定です。その後の工事施工を経て、はばたき橋の開通は来年の秋頃と見込んでいます。
なお、この話題については、平成24年12月4日のこのページで取り上げています。
12月2日には、中央自動車道「笹子トンネル」において、天井板が落下し、9名の方々の尊い命が奪われました。
現在、天井板落下の原因究明が進んでいますが、これまでの情報では、コンクリート製天井板のつり金具をトンネル本体のコンクリートに固定するボルトや接着剤の耐力が、老朽化や腐食などにより低下していた可能性が指摘されています。
この天井板の目的は、長いトンネルでは通行車両の排気により空気が汚染し、見通しも悪くなることから強制的な換気が必要となり、その換気の効率を上げるために設置されたものです。同様の天井板は国内に多くあり、今でもそれらの緊急点検が行われていることは、皆さまもマスコミ情報でご存知と思われます。
なお、現在では、笹子トンネルが建設された当時に比べて自動車の技術開発が進み、排気が極めてきれいになっていることから、現在設置されている天井板の多くがその役目を終えて、この機会に撤去されることが予想されます。
ただ、トンネルに限らず公共土木施設の老朽化の問題は、平成24年4月24日と平成24年7月9日のページでも少し詳しくお伝えしたとおりであり、その維持補修費に必要な予算確保の問題も含め、それらのページで現状と課題を再確認していただけましたら幸いです。
12月16日には衆議院議員総選挙があり、自民党が圧勝しました。
選挙期間中、安倍自民党総裁は、「国土強靭化計画」として、大型予算を投入しての、公共施設の健全度向上や大規模災害に対する備え強化などの実行を主張されていました。
それに必要な財源の問題についても、いろいろ議論のあるところですが、平成24年7月9日のこのページでご紹介したように、国の平成24年度の当初予算は一般会計と特別会計を合わせた総予算が229兆円、そのうち国債の利払いなどが85兆円で37%、年金、医療などの社会保障費が76兆円で33%、公共事業費は6兆2千億円でわずか2.7%という内訳です。
現在の公共事業費は、ピーク時であった平成1桁代に比べてほぼ半分です。維持管理費、建設費ともに、事業効果から見て真に必要な予算があることを十分に認識し、早急に、国家予算全体を見直し、旧態依然の流れから脱却しなければならないのではないでしょうか。
他方、今わが国に必要な“経済の活性化”の観点からは、公共事業予算は単なる呼び水です。それをきっかけにして、国民みんなで、この国の元気と住みやすさをどのように取り戻すかを考えながら、行動に移していかなければならないと思います。
今回は、この1年を振り返り、私どもに関連する主な出来事を抜粋してみました。
今年はこれが最後のページとなります。今年もお読みいただきまして、本当にありがとうございました。
来年こそは、もっともっと良いことがいっぱいありますようにお祈りしながら、新年をお迎えしましょう。
それでは皆さま、次回までお元気でお過ごしください。よいお年を!
平成24年12月25日
島田土木事務所長 渡邉 良和