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ホーム >島田土木事務所 >所長のことば >目指す“地方の活性化”

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目指す“地方の活性化”

 
 島田土木事務所長 渡邉 良和  
  • ※写真は、11月15日に行われた所内技術発表会で、筆者が所員に技術講習を実施している様子です

 

皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。

今年も既に紅葉の時季です。県内の多くの紅葉スポットでは今が真っ盛りのところが多いのではないでしょうか。当事務所の管内でも、川根本町の“寸又峡”が例年どおり鮮やかな景色を見せています。是非、おいでください。

 

中心市街地活性化シンポジウム

この10月20日には、藤枝市内において「中心市街地活性化全国リレーシンポジウムin藤枝」が行われました。

中心市街地活性化とは、近年、全国各地で中心市街地の空洞化が大きな課題となっているなかで、中心市街地が地域の経済や社会の発展に大きな役割を持っていることから、中心市街地における都市機能の増進と経済活力の向上を総合的かつ一体的に推進しようとする取組みで、よりどころは中心市街地活性化法です。

この法律では、対象としている「中心市街地」を

  1. 小売商業者と都市機能が相当程度集積しており、市町村の文化、経済等の中心となっている区域
  2. 機能的な都市活動の確保又は経済活力の維持に支障を生じ、又は生じる恐れがある市街地
  3. 活性化の効果がその地域だけではなく、その市町村や周辺地域に及ぶこと

以上3つの条件を満たす区域と規定し、このような区域に対して地方公共団体、地域住民及び関連事業者が相互に密接な連携を図りつつ、地域における社会的、経済的及び文化的活動の拠点となるにふさわしい、魅力ある市街地の形成を図る取組みに対して、国が集中的かつ効果的に支援を行うこととされています。

今回のシンポジウムには、地元藤枝市、富山市、塩尻市(長野県)の各市長と国、学識経験者が参加し、中心市街地活性化の必要性や方策に関する講演と事例発表、パネルディスカッションが行われました。

シンポジウムでは、活性化基本計画の認定を受けている107市(平成24年7月現在)の中で、シンポジウムが開催される市や事例発表を行う市は成功したところに限られるという発言もありましたが、今回の事例発表でも、成功した事例として3市長により各々の施策の概要やその成功理由が示されました。以下に事例発表のポイントを、発表順に紹介してみます。

最初の富山市は、第1期中心市街地活性化基本計画(H19年2月~H24年3月)に基づき、市内電車環状化事業(ライトレール=「次世代型の低床路面電鉄」の整備)を始め、核となる大規模商業施設や全天候型多目的広場、立体駐車場の一体的整備などのハード整備と、満65歳以上の高齢者を対象にどこへ出掛けても公共交通利用料金を100円とする事業や、中心市街地への居住を促進するための建設事業者や居住者に対する助成、中心市街地内の15箇所に設置された専用ステーションで自由に借り、任意のステーションで返却できる自転車利用システムの導入などのソフト策の、合せて27事業を区域面積436ha内で展開しています。

この結果、計画の3つの成果目標指標において、

  1. 「路面電車市内線乗車人数」が、H17年度10,016人/日からH23年度13,000人/日(1.30倍)の目標に対してH23年度実績11,476人/日(1.15倍)であったが、近い将来のライトレール接続完成により十分に目標値達成の見込み
  2. 「中心市街地の歩行者通行量」が、H18年8月24,932人/日からH23年度32,000人/日(1.28倍)の目標に対して、H24年3月33,247人/日(1.33倍)
  3. 「中心市街地居住人口」が、H18年9月24,099人からH23年9月26,500人(1.10倍)の目標に対してH23年9月23,507人(0.98倍)であったが、これは転入増にもかかわらず、高齢化率が高いことによる自然減の影響が大

という結果だそうです。

2番目の藤枝市は、第1期中心市街地活性化基本計画(H20年3月~H25年3月)に基づき、域内の土地区画整理事業や市街地再開発事業、にぎわい再生拠点施設事業などのハード整備に、産業祭、スポーツ&健康フェスタの開催など多くのソフト施策を組み合わせて72事業を区域面積160ha内で展開しています。

この結果、計画の3つの成果目標指標において、

  1. 「中心市街地の歩行者通行量」が、H18年度6,755人/日からH24年度8,400人/日の目標に対して、H22年度に8,893人/日と3年目に早くも目標達成!
  2. 「中心市街地居住人口」が、H18年度41,488人からH24年度61,500人の目標に対して、H20年度71,038人と2年目に早くも目標達成、H23年度には122,983人とH18年度の3倍に!
  3. 「中心市街地の公共施設利用者数」が、H18年度661,955人からH24年度947,000人の目標に対してH21年度963,559人と2年目に早くも目標達成、H23年度には1,005,327人に!

という、すばらしい成果を上げています。また、その他の成果として、中心市街地の人口がH12年度7,868人からH24年度9,732人に大幅に増加しているそうです。

3番目の塩尻市は、昭和57年旧国鉄塩尻駅移転後の、駅周辺市街地の空き店舗の増加とにぎわいの喪失という課題に対して、中心市街地活性化基本計画(H20年11月~H25年3月)に基づき、市街地再開発事業や優良建築等整備事業、暮らし・にぎわい再生事業などを区域面積110ha内で展開しています。

この結果、計画の成果目標指標において、

  1. 「中心市街地の歩行者・自転車通行量」が、H20年2月4,926人からH25年2月5,560人の目標に対して、H24年9月7,514人と大幅増加!
  2. 「中心市街地商業エリアの人口密度」が、H20年4月3,424人からH25年4月4,240人の目標に対して、H24年9月3,427人とほぼ横ばい!

などという結果だそうです。こちらも人口高齢化に伴う自然減の影響が大きいと推測されますが、そのなかで健闘している形です。

 

地方の活性化とは

さて、このシンポジウムの中で、中心市街地活性化の成果を上げるコツが市長等の意見として示されました。

それは、活性化は、地方公共団体、地域住民及び関連事業者が相互に密接な連携を図りつつ取組むものであるが、地方公共団体すなわち市の役割が極めて重要で、予算の重点投入が不可欠であるということ、そして、特定の地域への予算投入には市民の理解が必要であるから、中心市街地以外の地域の将来像も示し、そちらへの取組みも重要ということです。

これは中心市街地活性化に向けた1つの方策ですが、結果的には、私がこれまでにこのページでも何度か触れてきたことと重なる指摘でした。

すなわち、少子高齢社会における今後のまちづくりはコンパクトシティ化が必要であるが、並行して、周辺地域や中山間地域をどのようにしていくのかが議論され、実践されなければならない。地域としてのこの国の形をどうして行くのかの議論が必須ということです。なお、コンパクトシティ化の意味を復習しますと、市街地のサイズを公共交通や自転車の利用、あるいは歩行による移動を想定した狭い範囲として機能を集約し、それにより、まちの整備・維持の効率化を図る方向に誘導するやり方です。

前回のこのページでは、藤枝市岡部町朝比奈地区の「大龍勢」の賑わいが、地域の伝統、文化を活かして地域に活性化をもたらすものと紹介させていただきました。

この国は、地形・地質条件からも、山地部や中山間地をないがしろにすることはできません。例えば山の崩落や河川護岸の損傷が起こった場合、それらに気づくのが遅れたり修復が遅れたりすれば下流域に甚大な被害を引き起こすことにつながります。

朝比奈のように、各地域の自然や文化、産業などの特徴を最大限に活かしつつ地域の活性化を図り、地域の皆さまに将来にわたって地域を守り続けていただく仕組み、取組みが必要となっています。そして、そのためには当然、行政がしっかり汗をかいて、地域の皆さまと一緒に将来像を描き、その実現に尽力しなければならないと思います。

市街地以外に住む人々の、暮らしの中の日々の情報や彼らの労働力が、県民、国民全体の生命・財産の保全に一役買っているという構図になっている面があることを、今一度皆で共有し、地方の将来に向けて何ができるのか一緒に考えましょう。

 

今回は、今後の、少子高齢社会における地方のあるべき姿について考えてみました。

それでは、皆さま、風邪に注意しながら、次回までお元気でお過ごしください。

 

 

                            平成24年11月15日
                                島田土木事務所長 渡邉 良和