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ホーム >島田土木事務所 >所長のことば >藤枝市の「朝比奈大龍勢」

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藤枝市の「朝比奈大龍勢」

 
 島田土木事務所長 渡邉 良和  
  • ※写真は、10月16日に島田市で行われたリバーフレンドシップ調印式の様子です(左から2番目が筆者)

 

秋が深まり、気温がぐっと下がってきました。皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。

今年の夏は、7月こそ前年に比べて気温の低い日が多かったのですが、8月、9月は暑い日が続きました。

こうした中、私どもの事務所でも、今年も昨年に続いて節電に努め、目標が平成22年度と比較して15%節電とされたのに対して、本所と川根支所を合せて30.8%の節電を達成することができました。来訪された皆さまにもご協力をいただき、ありがとうございました。

 

朝比奈大龍勢

さて私は、去る10月20日に、藤枝市岡部町の「朝比奈大龍勢」を観に行ってきました。

朝比奈大龍勢については、県内では多くの皆さまがご存じかも知れませんが、私は、名前は知っていたものの実際に見たことがなかったため、詳しくは知りませんでした。

子供の頃に遊んだ龍勢花火は、竹ひごの先に火薬が装填されたものを竹筒や空き瓶に立てて、導火線に火をつけると数十メートルまで上がってから上空で“パンッ”と音をたてて破裂するだけの簡単なもので、朝比奈の龍勢も、まことに失礼ながら、子供の頃の花火を単純にサイズアップしたもので、こじんまりと上げられているのだろうと勝手に誤解していました。

しかし、今年、藤枝市役所からご招待をいただいた後、所用で市役所を訪問した折に玄関脇に備えられたパンフレットを手にしたとき、赤面するほどに自分の無知を恥じました。この大龍勢は、岡部地域の人たちが、各地区に伝承される技法を守り後世に伝えていこう、伝統ある地域のさらなる活性化につなげていこうという強い思いが込められ、単純に上空で破裂するだけではなさそうだということに気づかされたからです。必死の努力をされている地域の皆さまに、本当に申し訳ない気持ちになりました。そして、是非一度見学をしてみたいと思ったのです。

大龍勢をご覧になっていない方々のために、私が当日見学した龍勢の姿やインターネット、当地域に在住し、製作にも関わっている私の知人などの情報も参考にしながら説明をしてみます。

朝比奈大龍勢は、戦国時代に岡部町(平成の大合併で、現在は藤枝市)の場所に居を構えた今川氏家臣の朝比奈氏と岡部氏が、緊急連絡用に用いた狼煙(のろし)が起源だそうです。

現在では、単に狼煙というようなものではなく、常設のやぐらから打ち上げられると200m~300mほどの高さに達し、頂点で、または落下し始めるころに、大小さまざまでカラフルな、数多くの落下傘が打ち出され、それらのいくつかは赤色や青色の煙を吐き出しつつ、風にもてあそばれながら、風情豊かにゆっくり落下していくという見応えのあるものになっています。

 

技術の伝承と地域文化

大龍勢は、岡部地域の各地区の人たちが2年に1度、それぞれ10人~30人ほどのグループ(“龍勢連”と呼ぶ)を作り、2か月ほどの期間をかけて、各“龍勢連”で伝承された技法に基づき製作し、地域の神社の秋の例大祭で奉納する形で打ち上げられます。

13に及ぶそれぞれの龍勢連に伝わる技法では、火薬の配合や原材料、火薬への水分の含ませ方などがあるようです。私は、火薬に水分を含ませると聞いた時、えっ?と思いましたが、乾燥しきった火薬では一瞬のうちに爆発的に燃え尽きてしまうため、水分量で燃える速度を調整するのだそうです。そして、火薬に水分を含ませるのには、渋柿の柿汁を火薬に混ぜるなどの方法があるのだそうです。

龍勢連の構成員は、20代から70代までなどと幅広いことが多く、年代を超えて、良き伝統を、良き地域を守っていく形がしっかりできています。

また、打上げの際には木組みの呼び出し櫓の上から口上が述べられた後に打上げられ、打上げ後は、龍勢が上昇から頂点に達し、その後に吐き出された多くの落下傘が落下し終えるまで、その龍勢を盛り上げる解説が発せられ続けられ、さらに落下後には広い会場の隅々までを巻き込んで、成功を祝う万歳三唱で締めるという楽しいお祭りになっています。

今年の大龍勢は、昼の部が第1号から第17号まで、夜の部が第1号から千秋楽までの13回で、合計30回の打ち上げが行われ、2万4千人の見物客が集まったそうです。今年の最初の昼の第1号は、朝比奈第一小学校の児童や先生たちが地区の龍勢連と一緒に製作したものが打ち上げられましたが、打ち上げられた龍勢のパフォーマンスは完璧に近いもので、口上を述べる呼び出し櫓で、児童たちと先生が見守りましたが、余りのすばらしさに校長先生が感涙されたとうかがいました。この2年に1度の伝統あるお祭りが、地域の文化として住民の一体感を醸成し続けているのだということに深い感銘を覚えました。

このような龍勢は、現在では、「朝比奈大龍勢」のほかに、埼玉県秩父市の(旧吉田町)の「龍勢祭り」、静岡市清水区草薙の「草薙大龍勢」、滋賀県米原市の「米原流星」、滋賀県甲賀市の「瀬古の流星」が残っているのみだそうです。

各地域で、それぞれの伝統、文化を守りながら、地域の“元気”がさらに発展されることをお祈り致します。

 

今回は、地域に伝承される貴重な文化の話題を紹介させていただきました。

少子高齢社会における各地域の、今後のあるべき姿として1つの示唆をいただいた気がします。私どももそれぞれの地域で、それぞれに相応しい、みんなが元気で暮らせる地域の姿を見つけ、歩んでいきたいものです。

それでは、次回まで、お元気でお過ごしください。

 

 

                                平成24年10月25日
                                   島田土木事務所長 渡邉 良和

 

打ち上がる龍勢
多くの見物客
打ち上がる龍勢とコスモス畑
盛り上がる多くの見物客