• 文字サイズ変更
  • 文字拡大
  • 文字サイズを戻す
  • ホーム
  • くらし・環境
  • 健康・福祉
  • 教育・文化
  • 産業・雇用
  • 交流・まちづくり
  • 県政情報

ホーム >島田土木事務所 >所長のことば >生活の中の“熱”

ここから本文です。

生活の中の“熱”

 
 島田土木事務所長 渡邉 良和  
  • ※写真は、9月末に藤枝市で行われたリバーフレンドシップ調印式の様子です(一番右が筆者)

 

厳しかった残暑も納まり、ようやく秋らしくなってきましたが、皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。

今年の残暑は、気象庁によれば過去115年間で最も厳しく、北海道の旭川市と岩見沢市で平年を4.6度上回るなど、全国154地点中51地点で観測史上最高を更新したそうです。

昨年に引き続いて節電に努められた皆さまも、9月のエアコン使用量増加で、電力量が予想外に伸びてしまったのではないでしょうか。

 

夏は白色の服装が涼しい

ところで、夏は太陽の光を反射する白色系の服装が涼しく、冬にはその逆で、黒色系の服装が暖かいと言われます。今年の残暑の中でも、日蔭の涼しさと対照的に、直射日光の当たる場所では暑さがひどく、皆さまも、服装の色は半ば本能的に白色系を選択していたと思います。

この、色の違いによる暑さの差、すなわち温度の上がり方の差について、考えてみます。

科学的に言うと、このような場合、光が物体に吸収されると、光のエネルギーが熱になって物体の温度を上げるため、温度の上がり方は、物体の色の違いによる光の吸収量の差に左右されるという説明になります。

すなわち、太陽光を反射しやすい(反射率が高い)白色系の衣類は温度が上がりにくく、黒色系は光を反射しない(反射率が低い)ので衣類が温まるという結果になります。皆さまが夏に、自動車のフロントガラスの内側に立てる銀色の反射板は、白色よりもさらに反射率が高いために、車内の温度を上げにくくする効果が高いのです。

なお、白色・黒色の間の中間色は、明るさに応じて光の反射率に差がありますので、温度の上がり方も、白色・黒色の間でその色に応じて変わります。

 

 

熱の伝達速度

もうひとつ、熱の話題です。

2つのコップに入れた温度が異なるお湯を、寒い室外などに放置した場合の、お湯が冷える時間を考えてみます。

たとえば、外気温が10度と仮定して、100度のお湯が60度まで下がる時間と、60度のお湯が20度まで下がる時間に差があるでしょうか。どちらも、前後の温度差は40度です。

この場合、お湯の温度が下がるのは、お湯の熱が外気に奪われるためなのですが、それは科学的に言うと、「対流による熱の伝達」と「放射による熱の伝達」によるものです。「ニュートンの冷却の法則」によれば、自然対流と放射による物体からの熱流の速度は、物体と周辺の温度差、および物体の表面積に比例するとされており、お湯が冷やされる速度はお湯と外気温との差に比例するため、同じ40度の温度降下でも外気との差が大きな100度のお湯の方が、60度まで下がる時間が短いということになります。なお、この法則は 経験的に導かれた法則なので、物体と周辺との温度差が極端に大きい場合には成り立たないこともあるが、日常的な範囲であればほぼ完全に成り立つとされています。

また、放射による熱の伝達のみに着目をすると、「シュテファン・ボルツマンの法則」があります。この法則は、黒体から一定の時間に放射されるエネルギーの総量は、黒体の温度(絶対温度*)の4乗に比例するというもので、こちらは、1884年にシュテファンが実験から見つけ出し、弟子のボルツマンが理論的に説明したもので、経験則ではありません。

ここで“黒体”と限定しているのは、上述の“反射率”が0%、すなわち放射率100%のものを想定して、法則の説明をわかりやすいものとしているためです。一般の材料については、放射率がさまざまであるため、そのエネルギー(熱)放射量は黒体の場合の数値を放射率で補正して算出します。

詳細な試算は省略しますが、この法則からも、放射による熱の伝達について、お湯が冷やされる速度は、同じ40度の温度降下でも、100度のお湯が60度まで下がる方が速いということになります。

*絶対温度とは、「絶対温度=摂氏温度+273(正確には273.15)」の関係があり、熱力学の法則から理論的に決められた温度です。摂氏温度では、1気圧における水の氷点を0℃、沸点を100℃としますが、このように、特定な物質の性質に依存する方法では温度を一義的に定義することはできないため、物質の種類に無関係な温度として導入されたそうです。

 

今回は、生活に身近な“熱”のお話しをさせていただきました。

お話の後半は、少し深めの科学的な内容になり、消化が大変だったでしょうか。

上述した内容から、結局、夏でも冬でも、お湯や室内の温度(熱源)と、周り(外気)の温度との差の大小が、熱伝達の速度の大小になり、エネルギーロスの大小につながることがわかります。

この夏に続き、間もなく来る冬も、多くの皆さまが節電・省エネに努められることと思います。今回のお話も参考にされながら取り組んでいただけましたら幸いです。

それでは、次回まで、お元気でお過ごしください。

 

                                平成24年10月9日
                                   島田土木事務所長 渡邉 良和