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土砂災害から身を守るために

 
 島田土木事務所長 渡邉 良和  
  • ※写真は7月19日の移動知事室で川勝知事に説明をする筆者(中)


 皆さまお元気でお過ごしでしょうか。
先週7月17日に、東海地方は梅雨明けしたと見られると、気象庁から発表されました。今年の梅雨入りの時期は平年値どおりでしたが、梅雨明けは平年に比べて4日早かったそうです。
 ところで、先々週から先週にかけては梅雨前線が活発化して、熊本、大分両県を中心とした九州北部で、多いところで1時間に100ミリ以上、同様に総雨量は700ミリを超えるなど記録的な大雨がありました。死者、行方不明は合わせて30名以上になっているとの報道です。
 また、同時に山口県でも大きな被害が発生しているとのことで、近年の集中豪雨の頻発には本当に胸が痛みます。

 

災害に備えるハード対策、ソフト対策

前回(7月9日)のこのページで、牧之原市静波で民家裏の山腹斜面が崩れ、斜面に生えていた多数の樹木が倒れて家屋に倒れ込んだものの、県が予防対策として設置してあったコンクリート擁壁が家屋への土砂の侵入を食い止め、人命を救うことができたというお話をしました。
 しかし、昨年の東日本大震災を見てもわかるように、構造物による防御、すなわちハード対策には限界があります。構造物の建設には大きな予算や時間が必要ですし、そもそも構造物の設計はある一定の状況を想定して行うものであるため、その想定を超えた場合の効果は極めて限定的になるからです。例えば津波対策堤防では、津波高を想定しなければ堤防の高さを決めようがないといえば、お分かりいただけると思います。
 また、設計時の想定を、“絶対に超えられないような高さ”にすることは、通常は、それに必要な予算や整備に要する時間を考慮すれば実務的ではないことも、ご理解いただけると思います。ただし、原発のような特殊なものは、個別に判断すべきことは言うまでもありません。
 すなわち、津波や洪水、あるいは土石流などの災害の状況は、想定して設計した諸条件を超える可能性を否定できないのですから、自分の身を守るためには“避難”というソフト対策が何より重要となるのです。

 

「自助」、「共助」、「公助」

平成7年の阪神淡路大震災の後頃から、災害に備える対応として、「自助」、「共助」、「公助」という考え方が、よく言われています。
 「自助」とは、個人や家庭で日頃から災害に備えたり、災害時には自主的に事前に避難したりするなど、自分で自分の身を守る事を言い、「共助」とは、地域の方々と消火活動を行ったり、お年寄りなど災害弱者の避難を協力して支援したり、周りの人たちと助け合うことを言います。そして「公助」とは、市や県、国、あるいは消防、警察といった公的機関による救助活動や支援物資提供のような、公的支援のことを言います。
 災害時には、自助・共助・公助が互いに連携し一体となることで、被害を最小限にでき、また、早期の復旧・復興につながるものとなります。
 しかし、東日本大震災では、「てんでんこ」の避難が脚光を浴びました。これは、「津波が来たら、取る物も取り敢えず、肉親にも構わずに、各自てんでんばらばらに一人で高台へと逃げろ」「自分の命は自分で守れ」という意味で、東日本大震災ではそれを守った小・中学生たちなどが犠牲にならずに済んだというものです。
 ここにも、市役所や自治会などの避難誘導が無くても、自ら避難することの重要性が顕著に表れていると言えます。

土砂災害の発生に備えて

そこで、私どもの事務所では職員の発案で、管内の市町と連携して、住宅の裏が急傾斜地であるなど土砂災害の恐れがある地域において、平時のうちに住民の皆さまと一緒に実際に裏山を点検して、住民の皆さま自らが抱えるリスクを実感していただく取組みを行うことにしました。
 多量の雨が降り続く場合などには、住民の皆さまが自らの判断で単独で、あるいは誘い合わせて、自主的に避難をしていただくためです。
 実は、私どもの管内の藤枝市では、市内の同様の危険個所を、既に職員たちが実際に現場を確認して、リスク管理に活かしているそうです。私どもの今回の取組みは、管内の全ての市町と連携して、住民と市町と、県との3者で現場を確認して、自助を最優先にしつつ、共助、公助の充実にもつなげようとするものです。
 管内には多くの対象地区があるため、全ての地区を完了するのにはかなりの時間を要しますが、市町とともに緊急度をしっかり判断して作業を急ぎ、早期に3者の共同点検を完了したいと考えています。対象となる住民の皆さまには、よろしくお願いします。

 

今回は、皆さまに災害から身を守っていただくための、新たな取組みに関わるお話をさせていただきました。
 私どもは、ハード整備も引き続き全力を挙げて進めていきますが、予算上の制約があること、そしてハード対策には限界があることを皆さまにご理解いただき、“避難”というソフト対策が、より適時かつ迅速に行われるよう、ご支援をさせていただきたいと思っています。
 それでは、次回までお元気でお過ごしください。
 また、お会いしましょう。

 

                                      平成24年7月23日
                                         島田土木事務所長 渡邉 良和