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大雨時などにおける土木事務所の特別な仕事


 
 島田土木事務所長 渡邉 良和  
  • ※写真は島田市の水防訓練に参加している県の新規採用職員を優しい眼差しで見守る筆者(右側)


 皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
 今年は6月19日に早くも静岡県周辺を台風4号が通過し、県内に大雨と強風をもたらしました。

 

◆台風4号による道路・河川への影響
 台風4号による管内の降雨量は多いところで300mmを超え、1時間雨量も最大72mmに達しました。風も、広範囲に倒木を発生させた昨年の台風15号を思い出させるほどに強いもので、この風雨により、私どもの管理する道路や河川にも影響が出ました。
 中山間地の道路では、多くの箇所で沢から路面に土砂が流れ出したほか、道路への倒木も数多く発生し、通行に支障が出ました。路肩が決壊した箇所もいくつかあります。道路の被害は計10箇所となりました。
 河川では、水位が下がってからの確認待ちの箇所も多くありますが、これまでに分っているだけで堤防や護岸の損傷が8箇所あります。
 これらの被災箇所については、速やかに詳細な調査をするとともに、復旧に向けて設計や予算確保の手続きをしていきます。

 

◆珍しい6月の台風
 6月に台風が襲来するのは珍しい気がします。どれくらい珍しいのか、気象庁のデータを調べてみました。
 月別の、日本への接近と上陸の平年値(1981~2010年の30年平均)は表1のとおりです。なお、“接近”の定義は、対象地点から半径300km以内の域内に台風が入ること、“上陸”の定義は北海道、本州、四国、九州への上陸が対象で、例えば沖縄などの島に実質的に上陸しても、記録上は“接近”扱いとなるそうです。

    

この表から、6月の日本上陸は平均して5年に1回程度であることがわかります。
 因みに昨年は、7月に台風6号が上陸したのが最初で、年間で3つ上陸しました。
 また、東海地方への接近の平年値は表2のとおりです。

    

これは上述した定義のとおり、日本への上陸の有無によらず、東海地方に接近した台風の数です。
 どちらの表からも、台風は7~9月が特に要注意月と分りますが、大雨をもたらすのは台風に限らないため、やはり日常の備えがとても大切です。

 

◆大雨時の土木事務所の態勢
 今回のように大雨が降ったり、その恐れが高くなったりすると、土木事務所や本庁(県庁)交通基盤部の関係課では、職員が職場内で異常気象時の態勢につきます。
 その態勢は雨や洪水の状況で人数が異なり、私どもの事務所では次の通り運用しています。一般の皆さまには少し馴染みの薄い用語が登場しますが、お許しください。
 1 事前配備
   第1次事前配備(管内市町に大雨、洪水、中部南に高潮、津波注意報、波浪警報が発令された場合)

           =職員2~3名で対応
   第2次事前配備(管内市町に大雨、洪水、中部南に高潮、津波警報が発令された場合)

           =降雨の状況により、職員最大8~9名で対応
 2 非常配備  
   第1次非常配備(警戒水位に達した、又はその恐れのある場合、具体的な水防活動を必要とするに

            至るまで時間的余裕があると認められる時)

           =職員16~18名程度で対応
   第2次非常配備(水防活動を必要とする事態の発生が予想される時)
            =職員40~45名程度で対応
   第3次非常配備(事態が切迫し、完全な水防体制の必要が予想される時)

           =事務所全員で対応
 このような基準に基づき、昨年度1年間の配備は51回(1つの異常気象で第1次から第2次に配備がランクアップしたような場合も、1回と集計しました。)に達しました。そのうち、第1次非常配備は台風6号と台風12号の時の計2回、第3次非常配備は台風15号の時の1回でした。
 今年度も、配備は既に13回、そのうち第1次非常配備が2回となっています。台風4号の際には、男性職員に混じって女性職員3名も夜通しの業務をこなしました。現在は、男女共同参画社会の中で男女の区別なく当番表が組まれ、必要に応じて夜間の業務も割り当てられるのです。

 

◆配備についた職員の仕事
 配備についた職員の具体的な業務はどのようなものでしょうか。代表的なものを羅列してみます。
 ①雨量観測(10箇所)データの監視、および関係機関への連絡
 ②水位観測(16箇所)データの監視、および関係機関への連絡
 ③中部電力ダムおよび長島ダム管理所からの情報取得、並びに川根本町との連絡調整
 ④石脇川新水門(自動運転)の制御盤による遠方監視と、必要に応じた手動遠隔操作
 ⑤石脇川水門の手動遠隔操作
 ⑥萩間川・須々木川・湯日川の各水門の御前崎港湾管理事務所へ遠隔操作依頼
 ⑦国土交通省による大井川国直轄管理区間、駿河海岸に関する洪水予報と水防警報の受信、

 および関係機関への伝達
 ⑧瀬戸川水防警報(島田土木事務所長発令)の関係機関への伝達
 ⑨知事と気象庁長官が協同して行う瀬戸川・朝比奈川洪水予報の、関係機関への伝達
 ⑩葉梨川、栃山川、湯日川、坂口谷川、勝間田川、萩間川、大井川の避難判断水位(特別警戒水位)

 到達情報の関係機関への伝達
 ⑪県管理道路の、大雨や土砂崩れ、路肩決壊などによる通行規制および通行規制解除の実施、

 並びに関係機関への伝達
 ⑫JRをアンダーパスする車道横断地下道(2箇所)の水位遠方監視と、必要に応じた通行止め

 および通行規制解除の措置並びに関係機関への伝達
 ⑬当事務所管理施設に関して災害等の情報があった場合の、必要に応じた現地確認、

 または業務委託業者への確認および処置の依頼
 このうち、皆さまが頻繁に耳にされると思われる⑪の道路の通行止めについては、平成23年度は私どもの事務所において、基準雨量を超えたことによるものが38回(区間・回)、崩土や路肩決壊、倒木などによるものが23回(箇所・回)ありました。
 基準雨量による通行止めは、このたびの台風4号で、新東名の新静岡IC~藤枝岡部IC間で総雨量が250mmを超えて通行止めとなったものと同じで、道路斜面の崩落や落石などの恐れが生じることが理由です。なお、私どもの管理する国道や県道においては、通行止めの基準雨量は路線や区間により100mm~180mmとなっています。

 

今回は、前回と同じく一般県民の皆さまにはあまり馴染みのない、異常気象時配備などの業務について紹介させていただきました。皆さまにはどのように感じられたでしょうか。
 実は、大雨の降らない冬季にも降雪に伴う道路の交通止めやチェーン規制のために同様の配備態勢を余儀なくされ、また、管内で震度4以上または県内で震度6弱以上の地震が発生した場合や、津波注意報・警報が発令された場合なども出動しなければなりません。
 私自身、交通基盤部以外の出先機関の業務を詳しくは知らないのですが、各土木事務所や交通基盤部の道路局や河川砂防局の職員は、全員が、上述した配備態勢の当番制で割り当てられ、世間で言われる“暇な役所”とは縁遠い日常の忙しさと、予期し得ない異常気象時等の夜間当直に翻弄される日々を送っているのです。
 このような仕事についても皆さまに知っていただくことで、私どもの職員もさらに責任感とやり甲斐を感じながら日々の業務に当たれるものと思い、紹介させていただきました。

 

今年の梅雨入りは平年値どおりの時期であった東海地方の、梅雨明けの平年値は7月21日ごろだそうです。まだしばらく梅雨とお付き合いといったところでしょうか。
 それでは、次回まで、お元気でお過ごしください。

 

                                          平成24年6月25日
                                             島田土木事務所長 渡邉 良和