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皆さまお元気でお過ごしでしょうか。
6月8日に東海地方は梅雨入りした模様と、気象庁から発表されました。統計からは、梅雨入りは平年で5月末~6月上旬といったところで、6月8日は平均値として有力なXデーでしたが、今年の梅雨入りはまさにその日となりました。
◆出水期に備えて
「じめじめしてうっとうしい」やら「洗濯物が乾かない」やら、あまり喜ばれない梅雨ですが、これがないと夏の水不足や農作物の不作につながる恐れがあり、我々の生活に大切なものです。
そして、この梅雨の時期から始まって台風などの豪雨の襲来が終える秋口までの4~5箇月は、いわゆる“出水期” であり、洪水や土砂災害の備えが特に重要な期間となります。このため各市町では、毎年この時期に水防訓練や水防演習が行われます。
「水防法」という法律で、毎年の訓練が義務付けられているのです。
今年も、当所管内市町のうち、5月27日の藤枝市、6月10日の島田市、6月17日の焼津市の訓練(演習)に、昨年同様、私もお招きをいただきました。
◆“水防活動”とは
水防活動とは具体的にどのようなものかご存知ですか?豪雨の中でご自身が実際に活動を行ったり、またはその場面を身近でご覧になったり、あるいは水防訓練(演習)に参加をされたことのある方でなければ、「よくわからない」というのが正直なところではないでしょうか。
水防活動とは、豪雨などにより水かさの増した河川を見回り、堤防が決壊したり、流水が堤防を越えたりする恐れが生じた場合には、さまざまな工法を用いて被害を防いだり軽減したりするものです。水防訓練(演習)では、実際の洪水こそ目の前にしてではありませんが、古くから伝わる水防工法が現地で実践されます。
伝統工法には、「月の輪」、「木流し」、「釜段」、「シート張り」、「積み土のう」など(※工法の説明と水防訓練の様子は、平成23年6月21日のこのページに載せてあります。)があり、切り出した立木や土のう、杭やロープ、シートなどを用いて人海戦術で行うことが特徴です。
大型建設機械の発達した現代においては、それらを活用したもっと大掛かりな工法が可能とも思われますが、実際に水防活動が必要とされる事態においては、一刻を争うことが多く、伝統工法の有効性、重要性は今もなお、変わりません。
◆水防活動を行う場所は
水防活動が必要な場所は、堤防が決壊したり、洪水が堤防を越えたりする恐れがある場所ということになります。具体的には、県や市町の「水防計画書」で、河川の背後地の重要性も考慮したうえで“重要水防箇所”として定められ、それらはさらに、“重要度A”と“重要度B”に区分されています。
このうち、重要度Aは、時間雨量30mm/h、日雨量130mm/日相当の降雨に対して、河川が溢れたり堤防や河川に設けられた構造物が損傷したりするなどして、被害想定規模が200戸以上の家屋に及ぶと予想される箇所、重要度Bは、時間雨量50mm/h、日雨量200mm/日相当の降雨に対して、同様の被害想定規模が25戸以上の家屋に及ぶと予想される箇所とされています。
そして、重要度Aは「洪水注意報」が発令された場合に巡回、監視すべき箇所、重要度Bは「洪水警報」が発令された場合に巡回、監視すべき箇所となっています。
◆水防活動や訓練を行う際の心構え
実際の水防活動は豪雨の中で洪水を目の前にしての厳しい状況下で行われることから、活動やその訓練に当たって強く認識しなければならない事項があります。
私は、訓練の場で挨拶や講評の機会をいただく中で、訓練参加者の皆様に対して、以下の3点を常に意識しながら、実際の水防活動や日頃の訓練等に臨んでいただきたいと申し上げています。
1つには、水防活動が必要となる場面では、一刻を争うなど大型機械が十分に活躍できない場合も多く想定されるため、人海戦術である伝統工法は現代においても極めて有効な工法であること
2つには、同様に水防の場面では、訓練時のような十分な陣容が揃わないことも想定されるため、リーダー的なメンバーがいない中でも的確に活動できるよう、誰もが普段から工法等に熟練しておくこと、
そして最後に、水防活動は高いリスクの下に行なわれるもので、もとより団員の安全確保が極めて重要ですが、昨年3月11日の「東北地方太平洋沖地震」(東日本大震災)の際に、住民の避難誘導や水門閉鎖などを担った地元の消防団員の皆様の多くが犠牲になってしまったことを受けて、改正された水防法では団員の安全が最優先と明記されており、これまで以上に自分自身の安全を第一義としていただきたいということ
以上の3つです。
団員の皆様は日頃から、各地域で献身的な活動を実施されています。そして、その姿に市民・町民の皆さまは大いなる信頼と期待を寄せています。団員各位の活動に深く敬意と感謝を申し上げるとともに、ご自身の生命の安全に最大限留意された上で、市民・町民の期待に応えていっていただきたいと思います。
今回は、一般県民の皆さまにはあまり馴染みのない“水防”について、少し詳しく紹介させていただきました。地域で献身的に活動される水防団・消防団の皆様の活動は、県民の安全安心を支えています。
私ども土木事務所においても、市町当局の皆様と連携しながら、安全安心のためのさまざまな施策をハード、ソフト両面で推進しています。
皆さまの暮しの安全安心が着実に向上していくことを祈りながら、ページを閉じます。
それでは、梅雨に入りうっとうしい日が続くかもしれませんが、冒頭でお話しした梅雨の効用にも少し感謝しつつ、次回まで、お元気でお過ごしください。