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ホーム >島田土木事務所 >所長のことば >新東名開通の効果と、交通事故の撲滅に向けた意識

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 新東名開通の効果と、交通事故の撲滅に向けた意識



 
 

島田土木事務所長 渡邉 良和  

 

皆さまお元気でお過ごしでしょうか。
 ゴールデンウィークが終わり、皆さまもさまざまな思い出を胸に、それぞれの日常生活に戻られたというところではないでしょうか。

 

◆新東名開通の効果
 さて、4月14日の新東名高速道路開通は、予想通りの大きな効果がありました。
 NEXCO中日本の情報によれば、ゴールデンウィーク中の1日平均交通量は東名5万3,200台、新東名5万9,700台で、それらの合計は11万2,900台となり、前年の東名単独の交通量9万2,500台に比べて2万400台(22%)の増となったそうです。
 合計交通量の増加という実績からは、新東名の開通が地域の活性化に大いに役立っていることと思われますが、さらに、交通量の増加に反してこれまでこの時期の名物でもあった東名の渋滞が、10km以上の渋滞は前年の60回から1回に減少し、新東名と合わせても5回しか発生しなかったこと、また、30km以上の渋滞が、前年13回発生したのが今年は0回であったというところが、予想通りとはいえ本当に嬉しいことです。
 加えて、もうひとつの効果として県警の発表で、東名で発生した人身事故が前年の34件から8件に減少し、新東名と合わせても計20件で前年を大幅に下回ったというのも、非常に喜ばしいことです。

 

◆高速道路の事故
 新東名開通による事故減少の理由は、どのようなものでしょうか。
 高速道路での事故を考えるために、データが少し古いのですが(財)交通事故総合分析センターの資料(H10)を調べてみました。
 交通事故の発生する確率は、道路の総通行台数(台)と総走行距離(キロ)を考慮した事故率(人/億台キロ)の比較で、高速道路は、高速道と一般道を合わせた全道路の1/3程度と、かなり小さいものです。
 これは、歩行者や自転車の混入が無く、インターチェンジを除いては沿道からの出入りも無い高速道路の特性から納得できます。2005年に、国道1号の藤枝、掛川、磐田、浜名の4バイパスが無料化されたとき、交通が、信号のある当時の国道1号現道からバイパスに多量に移動したことにより、現道とバイパスを合わせた事故件数が大きく減少した実績もあります。
 その他のデータとしては、高速道路では、夜間事故の死者数は昼夜間全体の約60%を占めており、その事故率は昼間の3.6倍となっています。天候別では、雨天時事故の死者数は全体の約20%で、湿潤路面時の死亡事故率は、乾燥路面の4.2倍となっていることもわかりました。しかし、新東名開通による事故減少の理由に直接つながる情報は見当たりませんでした。
 そこで、事故減少の理由を勝手に推測してみます。まず1つに、これまでの東名に比べて渋滞が大きく減少したことにより、停止している車に後続車が追突する危険性が減少したこと。2つに、1路線あたりの交通量もが激減したことによって車間距離が大きく取れるようになり、物理的な危険性の減少に加えて運転者の心身の疲れも軽減されて、安全運転に集中できるようになった。というようなことが言えるのではないでしょうか。

 

◆一般道路の事故
 ここで高速道路から離れて、日常身近な一般道路における事故の特徴も、(財)交通事故総合分析センターの資料(H22データ)により確認してみました。
 交差点における事故が全体のうちの約55%を占めています。事故類型では車両相互が約86%、人対車両が約9%、車両単独が約5%となっており、このうちの車両相互事故をさらに見ると、追突が約38%、出会い頭が約31%となっています。
 私どもが普段進めている交通安全対策は、追突や出会い頭の衝突の危険を低減するための交差点の改良や、通学児童などの歩行者を守るための歩道整備、安全で円滑な運転を支援したり、安全に対する注意を喚起したりするための標識の整備など、交通の安全のための施設整備ですが、事故のデータからも、交差点の対策が非常に重要であることがわかりますし、歩行者の安全を守るためにガードレールや縁石で車道と分離された歩道を整備することも、まだまだ不十分であることは、皆さまが日常的に感じていらっしゃるのではないでしょうか。

 

◆交通事故の撲滅に向けて
 今年度に入り、4月12日の京都市祇園で車が歩行者の列に突っ込んだ事故、4月23日の京都府亀岡市で集団登校中の児童らの列に同じく車が突っ込んだ事故、4月29日には群馬県の関越自動車道におけるバスの事故と、ゴールデンウィークまでに大きな交通事故が連続して発生し、多くの尊い人命が失われました。
 今回は、私自身、その衝撃が大きく、新東名開通の事故減少効果の喜びとともに、一般道の事故減少に向けた施策についても、皆さまと一緒に考えてみることにさせていただきました。
 私どもは道路管理者の一人として警察とともに、交通事故防止に向けて必死の施策を展開しています。私どもの役割は、上述したように交通安全のための施設整備が主なものですが、現実を見ますと、実施しなければならない施策に対して予算と用地の確保が非常に大きな課題となっています。
 たとえば、京都府亀岡市の事故を受けては、車道と歩道の間にガードレールがなぜないのだ、早急に設置しろという話に当然なります。本当は、事故の起きるはるかに前から、そのような対策が行われているべきです。しかし、実際は事故を未然に防止する施策が、全国的に、充足というレベルからは程遠い気がしています。
 私どもの地域の皆さまから、「事故が起きてからでは遅い。1日でも早く整備を…。」とご要望をいただいても予算がなくて順番待ちとなったり、予算が確保できて用地のご提供を地権者の方にお願いした場合にも、公共事業の補償基準による補償額では不足と言われ、ご提供いただけなかったりという事例は残念ながら数多くあるのです。
 公共事業バッシングの風潮や、公共事業費縮減を当然とする世の中の流れはなかなか止みませんが、他人(ひと)の痛みがわかる“日本人の心”を思い出し、真に必要な予算・財源とは何かを、今一度真剣に皆さまにお考えいただき、それぞれのお立場で行動に移していただけましたら幸いです。

 

痛ましい交通事故が1日も早く無くなることを祈りつつ、今回のページを閉じます。
 それでは、次回まで、皆さまお元気でお過ごしください。

 

                                 平成24年5月11日
                                    島田土木事務所長 渡邉 良和