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ホーム >島田土木事務所 >所長のことば >年度末工事と繰越工事

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 年度末工事と繰越工事



 
 

島田土木事務所長 渡邉 良和  

 

皆さまお元気でお過ごしでしょうか。

寒い日が続きますが、すでに3月も中旬。花も、梅から桜へと主役の交代時期が近づき、今年度も残すところあと半月となりました。

今回は、私ども行政における“年度末工事” と“繰越工事”に関するお話です。

 

年度末の工事

「年度末になるといたるところで道路が掘り返されて…。役所は余った予算を返すのが嫌で、何とかして予算を消化しようとするから、毎年、年度末になると無駄な工事をやるんだ。」

世間では、しばしばこのような会話を耳にします。

本当に、年度末にはそのような無駄な工事が行われているのでしょうか。

その実情を、少し掘り下げて考えてみましょう。

 

事業の流れ

私ども土木事務所のような出先事務所における、代表的な事業の進め方を説明します。

  1. 既存の地形図などを用いて、対象箇所の概略の整備計画を作成
  2. 1.の計画をもとに、現地の測量や調査を実施
  3. 2.の成果をもとに、詳細な計画・設計を実施
  4. 3.の成果をもとに、必要な用地の幅や面積を確定し、補償関係の調査を実施
  5. 4.の成果をもとに、必要な用地を取得(用地交渉)
  6. 工事の実施に必要な規模の用地が取得できた段階で、工事を発注
  7. 工事を実施し、完成

以上のような流れとなります。

 

会計の原則=単年度主義=

いわゆる役所、すなわち国や地方公共団体の予算は、単年度毎に組まれ、複数年度にまたがる予算は原則として認められていません。

ただし、大規模な橋梁やトンネル工事のように工事を分割できないために単年度では完成が困難なものについては「債務負担行為」、単年度内に完了する予定で着手し、途中で年度内に完了できないことがわかったものは「繰越」、発注が年度の後半となり、契約時点で年度内に完了できないことがわかっているものは「翌債」、という3つの例外的なやり方で複数年度にまたがって予算を執行することが、事前に議会の承認を得ることを条件に認められています。

とはいえ、もちろん、予算の大部分は単年度予算として執行されます。

 

各年度の事業の進め方

私どもが事業を執行するためには、予算が必要です。

通常、各年度初めの4月初め~5月末頃に、その年度の予算が配分されます。県の単独予算の場合は配分が早いのですが、国から予算(国費)が補助されて県費と合せて執行するものは、国から予算内示をいただいた後に国に交付申請をし、その交付決定を受けた後に配分されるため、予算の配分は5月末頃になってしまうのがふつうです。

そして、予算の配分を受けた出先事務所では、上述した「事業の流れ」のすべてのステップを単年度に消化することは時間的に困難なため、例えば、今年度は現地測量から用地関係調査まで、あるいは用地取得のみ、というように年度計画を立てて執行します。

もし、前年度までに用地が取得できていて今年度から工事に着手といった箇所や、昨年度までに工事に一部着手できていて、今年度はその続きを施工するといったような箇所は比較的スムーズに執行できます。

それに比べて、今年度は測量・設計や用地取得を実施したうえで工事も行うといった場合は、工程は厳しいものになることがあります。施工業者の皆さまに工事を急いでいただいても年度末までかかってしまうこともよくありますし、中には、工事に着手した結果、想定外の不良な地質に出会ったり、電柱の移転が予想外に遅れたりなどで、年度末どころか、上述した「繰越」により、年度をまたいで工事をせざるを得ない場合も出てきます。

 

年度末工事や繰越は“悪 ”なのか

そのように年度末まで工事がかかってしまう場合や繰越をする必要が生じた場合は予算を返して、次年度に改めて工事を発注すれば良いのではないか、という考え方も出来ます。

そこで、皆さまにお考えいただきたいと思います。

私のこのコーナーで何度か触れたように、最近の公共事業は、長年のバッシングにも会い、予算が削減され続けてきました。そして、そのお蔭(?)で無駄な事業をする予算どころか、各地域の皆さまからご要望をいただいている“真に必要な”多くの事業箇所についても、事業になかなか着手できないというのが実情です。

そうした中で、年度末にかかってしまうからという理由で仕切り直しをし、改めて次年度に事業を進めることにすれば、事業効果の発現は数ヶ月遅れてしまいます。繰越をしないで事業を途中で打ち切り、改めて次年度に事業を再開する場合も同様です。

例えば、10月に着手して完成が3月末になる見込みの、すれ違えない道路を2車線に拡幅する工事を、年度末まで工事がかかってしまうからという理由で工事を縮小し、次年度予算で改めて再開して完成させるとします。そうすると、次年度予算の配分後に工事発注手続きを始めるので、工事契約が5月~6月頃になり、新たに受注した建設業者は契約後に工事の準備から始めるので、完成時期は早くても7~8月以降になってしまいます。

また、新入学児童の安全のために、4月から新しい歩道を通ってもらおうと計画した現場も、同様に、歩道の完成が大きく遅れて夏頃になってしまうということにもなるのです。

年度内に事業を執行し終えることは、私どもの当然の義務です。

そして、真に必要な事業の現場を、完成が年度末になってしまったり、繰越手続きが必要になったりすることがあっても、1日でも早く完成させてご利用いただくことも、同時に、私どもの県民の皆さまに対する責務の一面と考えます。

年度末の工事や繰越はやめて予算をお返しすべきか、そのような場合であっても工事を進捗させて、1日でも早く完成させるべきか、皆さまそれぞれが、このようなテーマに対して事情をよくご認識いただき、どちらを重視すべきかをお考えいただけましたら幸いです。

 

現在の、年末年始および年度末の工事抑制の取組み

このような事情ではありますが、県では県管理道路において、「年末年始期間はすべての道路で工事を行わない」、「年度末の3月1日~31日には、主要なJR駅を中心とした半径2kmの範囲内では、交通量が比較的多い道路の工事を抑制する」という取組みを実施してきています。なお、交通事故を防止するための緊急的な工事はこの規制の対象外です。

また、この取組みでは、電力会社や電話会社などの占用者の皆さまにも同様の対応をお願いしています。

今回は、年度末工事と繰越工事についてのお話でした。

今後とも、広く皆さまのご意見を頂戴しながら、皆さまの目線に立った行政を進めて行きたいと考えています。ご理解、ご協力をお願いします。

それでは、次回まで、お元気でお過ごしください。



                                    平成24年3月14日
                                       島田土木事務所長 渡邉 良和