平成22年度巴川流域水害対策計画によるモニタリングの公表
1.背景と目的
(1)背景
巴川流域では、昭和49年の七夕豪雨(死者行方不明者:41名、浸水家屋数約2万6千戸)を契機として、河川改修、放水路・遊水地の設置、流域での雨水貯留浸透を柱とした「総合治水対策」を推進しており、大谷川放水路、麻機遊水地(第3工区、第4工区)及び大内遊水地を設置するとともに、公共施設での雨水貯留や民間による調整池の設置を進めてきました。
平成11年の大谷川放水路の完成などにより、被害は劇的に軽減されているものの、依然として、平成15年(浸水家屋数806戸)、平成16年(浸水家屋数383戸)には、大きな浸水被害が生じています。
これらの被害の形態は、内水被害を主としており、都市化の進展(平成17年現在の市街化率:約50%)や豪雨の激化などにより、流域の治水安全度が劣化していく方向にあることから、効果的な河川・下水道整備を推進することと併せ、これまでの流域での取り組みの強化が必要となりました。
このような現状に対応するため、平成16年に「特定都市河川浸水被害対策法」が施行され、巴川流域では、同法に基づく特定都市河川及び特定都市河川流域の指定を平成21年4月1日に行い、平成22年3月には河川管理者、下水道管理者及び静岡市が共同で浸水被害の防止を図るために「巴川流域水害対策計画」を策定し、今後、さらに流域での連携を強化し、総合的な浸水被害対策を実施していくこととしました。
(2)モニタリングの目的
流域の土地利用の変化や浸水被害対策施設の整備段階によって、流出形態や被害の様態が変化するなど、都市水害対策はまちづくりと密接な関係にあります。
このため、都市の開発、保全、再生などに伴う流域の変化や「巴川流域水害対策計画」に基づく対策の進捗状況をモニタリングし、対策の効果・影響等の検証を行うとともに河川事業と下水道事業等の進捗状況の調整等を行っていくこととしています。
今回は、平成22年度のモニタリング結果について公表するものです。
2.各種対策の進捗状況
(1)流域内の開発状況
平成22年度において、流域が開発された面積は約4haで、全て市街化区域内でのものです。
(面積は、都市計画法の開発許可の面積(当該年度において第32条協議による雨水貯留浸透施設を設置した箇所)及び特定都市河川浸水被害対策法の行為区域の面積(当該年度において第9条許可又は第14条協議による雨水貯留浸透施設を設置した箇所)の合計です。
(2)事業の進捗状況
ア.河川事業の整備
(注釈)
- 対象河川は「巴川流域水害対策計画」において整備事業箇所がある河川で、麻機遊水地第3、第4工区などについてはこれまでの総合治水対策の取組みにおいて完了しています。
- 計画の内容については「巴川流域水害対策計画」を参照して下さい。
- 実施率は流域水害対策計画で目標としている施行箇所の進捗率です。大谷川放水路は延長割合、麻機遊水地は面積割合で算出しています。
イ.下水道事業の整備状況
(注釈)
- 実施率は流域水害対策計画で目標としている施行箇所(幹線及び雨水ポンプ施設)の進捗割合で、ポンプ排水区域は雨水ポンプ施設の流量割合、雨水排除の整備は幹線等の面積割合です。(下水道の 整備率とは異なります。)
- 実施率の()は工事着手までの雨水ポンプ施設設計、用地取得等の進捗を事業費割合で示しています。
- 実施率が100%に到達しても、道路側溝等の枝線の整備状況により、目標降雨に対して浸水が発生する可能性はあります。
- 計画の内容については「巴川流域水害対策計画」を参照して下さい。
ウ.雨水貯留浸透施設の整備状況
(ア)地方公共団体等が実施した雨水貯留浸透施設の対策量
事業主体 |
目標対策量(m3) |
既対策量(m3) |
実施率(%) |
設置箇所 |
合計 |
約16万 |
13,956 |
8.7% |
|
静岡市 |
約10万 |
3,088 |
3.0% |
横内小学校 |
静岡県 |
約6万 |
10,868 |
20.1% |
県立美術館駐車場等 |
(注釈)
- 「目標対策量」は流域水害対策計画における目標対策量です。
(イ)雨水浸透阻害行為の対策工事の中で設置された雨水貯留浸透施設の内容
平成22年度までの累計 |
|||||
許可件数 (9条・14条) |
対象施設 |
||||
件数 |
貯留(m3) |
透水性舗装(m3) |
透水トレンチ(m) |
浸透側溝(m) |
浸透桝(個) |
17 |
1,159 |
0 |
0 |
0 |
6 |
雨水浸透阻害行為の許可件数の内訳(9条、14条及び16条)
平成22年度までの累計 |
|||
9条(許可) |
14条(協議) |
小計 |
16条(変更協議) |
16 |
1 |
17 |
2 |
(注釈)
- 許可件数及び対策施設については、平成23年3月31日現在における累計の値を示しており、法第16条の変更があった場合は、変更後の累計の値としています。
- 実績は、当該年度までに完成検査を行った施設を対象としています。
保全調整池指定状況
平成22年度までの累計 |
||
23条(保全調整池の指定) |
実施状況 |
|
基数 |
容量(m3) |
|
5 |
2,394 |
H21年度より実施 |
(注釈)
- 基数及び容量については、平成23年3月31日現在における累計の値を示しています。
(ウ)開発に伴い地方公共団体の条例・要綱に基づく指導により設置された雨水貯留浸透施設の内容
開発行為許可技術基準に基づく指導により設置されたもの
H22年度までの累計 |
|||||
貯留施設(m3) |
浸透施設 |
||||
透水性舗装(m2) |
浸透トレンチ(m) |
浸透側溝(m) |
浸透桝(個) |
その他浸透施設(個) |
|
1,387 |
86 |
47 |
47 |
24 |
0 |
要綱に基づく指導により設置されたもの
H22年度までの累計 |
|||||
貯留施設(m3) |
浸透施設 |
||||
透水性舗装(m2) |
浸透トレンチ(m) |
浸透側溝(m) |
浸透桝(個) |
その他浸透施設(個) |
|
690 |
6,432 |
260 |
0 |
192 |
0 |
(注釈)
(3)浸水被害拡大防止対策の状況
ア.都市洪水及び都市浸水想定区域図、洪水ハザードマップ等の防災情報の作成状況
(ア)都市洪水想定区域図及び都市浸水想定区域図
種別 |
作成主体 |
作成根拠法令 |
河川名 |
市町名 |
状況 |
都市洪水 想定区域図 |
静岡県 |
特定都市河川浸水 被害対策法第32条 第1項 |
大沢川 |
静岡市 |
平成23年度に公表予定 |
都市浸水 想定区域図 |
静岡市 |
特定都市河川浸水 被害対策法第32条 第2項 |
- |
静岡市 |
平成23年度に公表予定 |
(注釈)
- 巴川、大谷川放水路も特定都市河川として指定していますが、巴川については水防法(第14条第1・3項)に基づき、50年に1度発生が予想される降雨による浸水想定区域を指定 しており、浸水規模が大きいのでそちらを公表しています。
- 大谷川放水路については、50年に1度発生が予想される降雨でも外水氾濫しないことから都市洪水想定区域は公表しません。
(イ)洪水ハザードマップ
現在公表しているハザードマップ |
今後の予定(更新) |
||
公表年月 |
有無 |
ホームページでの公表 |
広報誌など印刷物での公表 |
平成16年3月 |
有 |
平成24年度(予定) |
平成24年度(予定) |
イ各種防災情報の周知状況
総合治水対策の意義・重要性に対する流域住民の理解と協力を得るため、「総合治水推進週間(5月15日~21日)」が平成3年度に制定されました。巴川流域総合治水対策協議会ではその趣旨を踏まえ、総合治水対策の啓発活動を静岡県、静岡市それぞれで実施しています。
(ア)パネル展示
静岡県静岡総合庁舎では、総合治水を紹介するパネルを展示しています。
また総合治水推進週間では、静岡市役所静岡庁舎において懸垂幕を掲出して事業を啓発するとともに、同庁舎では総合治水を紹介するパネルを展示しています。
静岡県静岡総合庁舎(2階) |
静岡市役所静岡庁舎(1階ロビー) |
(イ)静岡市治水交流資料館「かわなび」
静岡市治水交流資料館は、治水対策事業や過去の水害についての学びの場を提供し、市民の防災意識の向上を促し、災害に強いまちづくりの推進を図ることを目的とした施設です。
巴川シアター等の各種展示物により、水害の恐ろしさや総合治水対策の重要性を学びに、平成22年度は、約4,600名の方々が来館しました。
また、平成22年8月7・11日には、「第2回治水を学ぼう!巴川バスツアー」を開催。2日間で計62名が参加して、麻機遊水地や大谷川放水路分流堰などを見学し、目で見て、説明を聞くことにより治水事業への関心と防災意識の啓発を図りました。
静岡市治水交流資料館 |
巴川バスツアー |
巴川バスツアー |
(ウ)ホームページによるPR
静岡土木事務所河川改良課にて開設しているホームページ(ともえランド)において、総合治水対策を紹介するなど住民等に向けて情報を発信しています。