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ホーム > 組織別情報 > 交通基盤部 > 島田土木事務所 > 所長のことば>台風12号と土砂災害のソフト対策と協働の取組み

平成23年9月6日 更新
静岡県島田土木事務所
 
    ◆◆◆ 台風12号と土砂災害のソフト対策と協働の取組み ◆◆◆



            島田土木事務所長 渡邉 良和 
※リバーフレンドシップ同意書調印式にて。向かって一番左が筆者です。


 皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
 このたびの台風12号の皆さまへの影響はいかがですか。

台風12号の被害
 台風の進路は当初見込みの“静岡県ほぼ直撃”から大きくずれ、四国から岡山県を経由して北上しましたが、スピードが極端に遅く各地に大雨をもたらしました。紀伊半島では豪雨が続き、奈良県南部では降り始めからの総雨量が1,800ミリを超えたそうです。1,800ミリというのは静岡県の平地部の年間平均雨量にほぼ匹敵する量で、奈良県南部にとっても年間平均雨量2,700ミリの3分の2が一度に降ったことになるそうです。この豪雨による土砂崩れや洪水に伴う、現地の壊滅的な状況の映像や、多くの死者、行方不明者の発生がマスコミで報道されています。
 当事務所管内でも、本川根の698ミリ、島田市伊久美の510ミリ、川根の461ミリなど多量の雨が降り、土砂災害や住宅への浸水に備えて藤枝市や川根本町で避難勧告が出されるとともに、島田市川根町では自主避難が行われ床上浸水も発生しました。
 県内外で、被害を受けられた皆さま、一時避難をされました皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
 この数日間、当事務所では関係する建設業者の皆さまとともに、昼夜の警戒態勢をとりました。この雨により、当事務所の管理する道路では多くの箇所で土砂崩れなどがあり通行止めが発生しましたが、事前に協定を締結している地元の建設業者の頑張りのお蔭で、これまでに大半が通行可能な状態となっています。管理する施設の被災につきましては、河川については、今後、水位が下がった段階で被災の詳細状況を把握しますが、これまでに道路2箇所、河川5箇所の被災が明らかになっています。今後、復旧に向けて速やかに対応していきます。

 さて、今回の台風で、改めて豪雨や洪水による災害の怖さが認識されましたが、先日、土石流災害に関する県外視察に参加をし、貴重な情報を得ましたのでご紹介します。

土石流災害に備えて
 去る8月25日~27日に参加した砂防関係の県外視察についてです。この視察は、毎年度、県外の主要な砂防関係事業箇所を視察することにより得た情報を、県内各地における土石流対策などに活かすことを目的とするもので、今年度は、平成21年に中国・九州北部豪雨により土砂災害に見舞われ、甚大な被害を受けた山口県防府市の現場の視察を中心に行われました。
 山口県防府市では、当時、1時間雨量72.5mm、総降雨量549mmを記録しましたが、この雨量は中国・九州北部エリアにおいて、多い方から1時間雨量が15番目、総降雨量は7番目でした。しかしながら、土砂災害発生件数を見ると、平成21年の全国における総発生件数が1,058件であった中で、山口県内のみで192件を数え、このうち防府市では、特養老人ホームライフケア高砂が土砂に直撃されるなどして死者が14名に達するなど、未曾有の災害となりました。
 この広範囲に及ぶ激甚な災害に対して、平成21年3月31日に改正された国土交通省令に基づき、国が災害対策事業の一部を直轄事業として実施するとともに、防府市も多くの渓流を対象に、精力的に対策事業を進めてきています。
 他方、土石流対策としては、これらのハード対策のほかに事前の避難というソフト対策も極めて重要ですが、当時、防府市は、老人ホームの被災に関してソフト対策である緊急避難勧告・指示を出さなかったことの責任を、マスコミや市議会等から追及されました。
 今回の視察では、当時、避難勧告・指示を出さなかった判断に関して、当市の松浦市長から直接、お話を伺うことができました。市長から示された要点は以下のとおりです。
 ・避難勧告はかえって住民を危険にさらすことになる場合がある。当時、勧告を
  出さなかったことは妥当であった。現在でも後悔はしていない。
 ・一方、早すぎる避難勧告は住民が従わない。結局、マスコミなどからの雨の情報
  などに応じて、個々の住民に責任を持って自分の身を守ってもらうしかない。
 ・ただし、自分で避難ができない災害弱者に対しては、行政が手を差し伸べなけれ
  ばならない。そして行政がその対策を遂行するためには、プライバシー云々は必
  ずしも言っていられない。どこにどのような弱者がいるかを、事前に、確実に把
  握しておかなければならない。
 このお話を伺い、一般に言われるように、早期の避難に勝るものはないと考えていた私も、ソフト対策の判断の難しさを改めて認識しました。
 と同時に、各地域の首長や住民の判断に差はあるかもしれないにせよ、私ども県の立場からは、気象台と連携して的確に必要な情報を発信すること、そして市町が事前に行う避難所や避難ルートの選定に当たって、住民の安全向上につながる充実した協力、支援をすることが責務であると、強く認識をしました。
 今後とも、管内市町と連携を密にして、住民の生命・財産の保全に万全を尽くすよう努めていきたいと思います。

地域を愛し、守ってくださる皆さまの力
 次は、県民と一緒に進める行政についてです。
 9月1日に、牧之原市役所を会場に「リバーフレンドシップ」の同意書調印式が行われました。リバーフレンドシップとは、地域住民などの団体と、県と市町との3者間で同意書を取り交わし、団体の皆さまに河川の草刈やごみ拾いなど、地域の環境整備につながる作業をお願いし、県は必要な資機材や消耗品を一定の限度内で提供、市町は刈り取られた草やゴミなどの処分をする、という役割分担に基づき、地域の河川を安全で親しみやすい場として維持していこうという制度です。
 今回の調印では、二級河川萩間川及び白井川を対象に、牧之原市の男神裏組、男神前組及び西萩間の各地区の住民の皆さまに、県と牧之原市との同意書をそれぞれ結んでいただきました。これにより、リバーフレンドシップ参加団体は、県下全体で283団体、このうち当事務所では94団体となりました。
 なお、このような住民と行政との、施設の維持管理に関する“協働”の取組みは、道路の歩道脇の花壇などでも行われ、そちらは「アダプトロードプログラム」と呼ばれています。参加団体は、現在、県下全体で119団体、このうち当事務所では29団体です。
 各参加団体の皆さまには、制度へのご参加に深く感謝申し上げますとともに、怪我や熱中症に十分に注意をされ、作業をしていただきますようお願いいたします。
 また、それら2つとは少し趣旨が異なる“協働”もあります。道路事業における「事業着手準備制度」です。この制度は、従来の、地域の皆さまから道路拡幅や歩道設置などのご要望をいただき、必要性・緊急性が高いと判断して事業に着手した結果、具体の計画に対して地域からご理解をいただけなかったり、用地をご提供いただけなかったり、円滑に事業を進められない…というような事例の反省に立ち、事業化をする前に地域の住民と県と市町の3者でワークショップを行い、事業の必要性や緊急度を確認したうえで一緒に計画作りを行うものです。従来のように、事業者である県が、自身の判断で最も適切と考えられる計画を作って示すというのではなく、ワークショップの場で一緒に計画作りから始め、意見交換の中で、必要な用地の提供の概ねのご了解もいただいてしまうというものです。
 この、一緒に計画作りから始めるという方法は、交通の高速性が要求される大規模な道路や、法に基づいた手続きが済んでいる都市計画道路などでは、必ずしも自由に計画を考えられるわけではありませんが、皆さまの身近な道路においては地域の意向を反映できる可能性は極めて高いものです。道路の中心をどこにするか、歩道は両側に欲しいか片側か、あるいは歩道無しでもいいか、欲しいとしたらその幅はいくつにするか、などについて、用地の提供者になる可能性のある人も含めて、地域全体の合意に達するまで何度でも話し合います。県や市町は、皆さまが考えるのに必要な情報を提供したり、求められた場合にアドバイスを差し上げたりするのみです。
 そして、地域が計画の合意に達し、円滑に事業が進められる目処が立った段階で、県全体の事業着手予定箇所の列に並ぶことになります。県の財政状況は厳しいものがありますが、その中でも、できるだけ早く事業に着手し、かつ、大急ぎで完成させるべき箇所に位置づけられるのです。
 「リバーフレンドシップ」も「アダプトロードプログラム」も、そして「事業着手準備制度」も、全て、公共事業費が縮減され極めて厳しい予算状況の中では、行政がやるべきことと住民の皆さまにお願いできることの仕分けをし、みんなで力を合わせて社会資本(生活基盤)を整備し、維持管理していくことが得策であるとの考えに基づくものです。
 「リバーフレンドシップ」や「アダプトロードプログラム」では、皆さまに河川や道路の維持管理の一端を担っていただきます。そして県は、河川の治水に万全を尽くし、安全で円滑な道路づくりや道路の耐震化・長寿命化を進めます。一方、道路の「事業着手準備制度」では、地域の皆さまにとって使い勝手が良く、地域に愛される道路を無駄なく、効率的に造っていくことができます。
 これらの制度に参加されている皆さまからは、草刈りやゴミ拾いをすると子供たちやお年寄りたちが安全で気軽に川に親しんだり、気持ち良く歩道を歩いたりできるので、いつもみんなが笑顔で積極的に作業をしていますという声や、最近はなかなか住民が集まって話す機会もなくなっていたが、草刈り作業や道路のワークショップの活動のお蔭で地域のコミュニティが戻ってきたよという声が聞かれています。

 私どもは、「県民目線」で行政を進めていきます。客観的に見ても公共事業の予算規模は現在の水準では十分ではないと考えていますが、少ない予算を、如何に県民の皆さまの満足につなげられるか、如何に効果的、効率的に執行していけるかという課題意識を強く持って、日々、真剣に取り組んでいます。
 県のさまざまな取組みについて、皆さまからも気軽にアドバイスをいただけましたら幸いです。
 それでは、お元気でお過ごしください。




                      平成23年9月6日
                        島田土木事務所長 渡邉 良和

 お問合せ先

  静岡県交通基盤部 島田土木事務所
  〒427-0019 島田市道悦5丁目7番1号
  電話番号:0547-37-5272
   FAX:0547-37-6183
  E-mail:shimada-kikaku@pref.shizuoka.lg.jp

   

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