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ホーム > 組織別情報 > 交通基盤部 > 島田土木事務所 > 所長のことば>災害対策の効果と発注者に必要な技術力

平成23年7月25日 更新
静岡県島田土木事務所
 
      ◆◆◆ 災害対策の効果と発注者に必要な技術力 ◆◆◆


             島田土木事務所長 渡邉 良和 
          
(※写真は、本文でご紹介する“現場力向上大作戦”の座学の様子です。)

今回の台風6号の影響
 皆さま、お元気でお過ごしでしょうか。
 台風6号が去り、わずか数日間ですが、少し爽やかな気候に恵まれました。台風6号は久しぶりの大雨をもたらし、当事務所管内では時間最大雨量が島田市伊久美で67mm/h、連続最大雨量が川根本町大間で637mmとなりました。今回の大雨により、大井川の下流部では何年かぶりに高水敷に水が乗り、球技場などに被害が出たそうです。
 当事務所が管理する施設では、河川の災害が4件、道路が小規模災害のみの1件発生しました。なお、河川災害については、今後の水位の低下を待って詳細調査となる箇所があるため、箇所が増える可能性があります。これらの被災施設については、今後、9月頃に予定される国による現場査定を経るなどして予算が確保でき次第、速やかに復旧工事に着手する予定です。

災害対策の着実な成果
 ところで、今回の大雨と土木施設の被災状況とを見比べると、ひと昔前と比較して被災の規模や量が意外に小さいなという気がします。
 その理由は2つ考えられます。
 1つには、昭和年代からこれまで、規模的にも量的にも大きな災害を何度も経験し、その都度、同じ箇所では再び同じ被災は繰り返さないぞと、土木技術力を駆使して、丈夫な施設(構造物)を造り続けてきたことがあります。
 道路や河川は、いわゆる工場製品と異なり、自然の地形や地盤の中に存在する、または造られた施設であるため、大雨などに対して強い部分と弱い部分が必ずあります。ただし、弱い部分といっても、初めからここがどの程度弱いと、必ずしもはっきりとは把握できない類の弱い部分ですから、当初の築造時には、費用対効果の発想からも、全てを完全に強く造っておくことは困難です。そして、これまでの災害復旧工事で、この弱い部分を一箇所ずつ長い年月をかけて強くしてきたために、今回のような大雨に対しても施設はかなり丈夫になっているということができるのです。
 2つ目には、これまでの社会資本整備の歩みの中で、狭い道路を拡げて円滑にすれ違えるようにしたり、河川の幅を拡げて、または堤防を嵩上げして洪水を防いだりする施策と並行して、既存の施設をくまなく点検し、弱い部分を探し出して補強するという施策を実施してきたことがあります。即ち“災害の未然防止策”に、継続的に力を注いできた成果が表れていると考えられるのです。
 以上、2つの理由を挙げてみましたが、結果として“災害に強い道路や河川”の実現に向けて着実に効果が上がっていると考えられます。
 しかしながら、決してこれで十分とは言えません。今後は、危惧される東海地震や3連動(あるいは4連動)地震への対策も含め、災害の未然防止策を、今以上に積極的かつ迅速に進めていかなければなりません。
 県では、現在、橋梁の耐震対策や道路の落石・斜面崩落防止、河川のゲリラ豪雨対策などを緊急的に進めています。しかし、施設が被災し壊れた後に復旧する費用よりも、把握できた弱い部分を壊れる前に補強する方が、費用を大幅に節約できることを考えれば、“真に必要な公共事業費”の1分野として、この“耐震対策を含めた災害未然防止策予算”をこれまでよりも増額して、施設の補強のスピードを大幅に上げることに、是非、県民の皆さまの力強いご支援をお願いしたいと思います。
 近年、公共事業はムダという風潮が定着している感もありますが、皆さまの日々の“安全で安心な暮し”のためには真に必要な公共事業がいくつもあることに、気づいていただけると思います。

職員に必要な“技術力”を磨くための“現場力向上大作戦”
 さて、当事務所ホームページのニュース欄に 、当事務所で実施している“現場力向上大作戦”の紹介記事を載せました。
 最近は、経費縮減の観点などから、アウトソーシング全盛時代となっています。しかしながら、これが技術部門でどんどん進み、仮に、インハウスエンジニアがほとんどいなくなってしまった場合は、
「業務受託者や工事施工者との作業着手時および作業途中の打ち合わせ、または成果品(完成工事)の受け取り(検査)などの発注者業務の大部分において、発注者としての判断を代わりの者(民間会社など)に委ねることになる。すなわち、“より経済的に、より良質な社会資本を造る”という発注者の責任の履行が、極めて不安定なものとなる。」
 という問題が生じます。
 私は若い頃から、発注者組織の技術力の低下に対する危惧と、上述したような技術部門におけるアウトソーシングの限界の問題が、課題として常に頭の中にありました。そこで、このたび当事務所に配属された機会をとらえ、この課題に対処すべく、技術職員全員を対象とした“現場力向上大作戦”の取組みを実践に移したものです。 

 前述したように、土木構造物は自然の地形、地盤が相手です。そのため、ある意味、目的物の製作上、自由に設計図を描いて物を作る工場製品とは異なり、地面の起伏や箇所ごとの地盤の強さ、あるいは弱さに応じて土の切り取りや盛り立て、構造物の形や土に隠れる基礎部分の構造などを計画・設計し、築造しなければなりません。予め与えられる現場条件が、工場製品に比べてはるかに大きな制約となるのです。
 しかも、その計画・設計は、利用者が安全に使え、かつ長期的に安定して安心なもので、さらに、より経済的なものを造るものでなければなりません。
 幸い、この計画・設計を効率的に行えるよう、土木施設の種別ごとに様々な「基準」や「指針」、「便覧」、「要領」、「マニュアル」などが出され、それを利用することができます。しかし、他方、基準類が多岐にわたりそれらを合わせると量が膨大となるために、それらの全てをマスターし切れない、という問題が生じます。
 そこで、発注者としての技術力はどうあるべきかということになります。
 私は、個々の技術職員が持つべき技術力について、以下のように整理できると考えています。

① 対象施設の種別の間口を大いに拡げつつ、種別ごとに設計理念のポイントを押さえた技術力

② 個別案件においては、現場をよく理解して、利用者の安全、施設の長期的安定、将来の維持管理費も含めたトータルコストの各面で有利な、最適な設計を導き出す技術力

③ 現場着手後、地盤を掘削した後などに新たに設計の修正が望ましい事情が判明した場合などに、施工者の負担を極力増大させないよう、速やかに最適案を判断できる技術力

 この中で、“現場をよく理解して”というのは、設計に先立ち測量された図面では表し切れていない地面の起伏、場所により異なる地盤の強さの変化状況、山を切り取る時のその現場の地質にふさわしい切取り勾配などを見極めることです。

 当事務所の“現場力向上大作戦”では、現場における担当技術職員と私との質疑応答と、その質疑応答を踏まえた全員出席の座学をセットにし、座学では、担当する現場(事業内容)や、質疑応答などで確認した現場の技術的なポイントを他の全員に披露することで、各人に技術の間口を拡げてもらうことと、技術的ポイントを学んでもらうことを狙いとしました。

 今後とも、調査・設計業者、施工業者の皆さまと力を合わせ、県民の皆さまに喜ばれ、愛される社会資本の整備、維持管理に、全力を上げて取り組んでまいります。
 調査・設計業者、施工業者の皆さまも、是非よろしくお願いします。

 暑さ厳しき折、県民の皆さまにおかれましても、くれぐれもご自愛ください。



                                 平成23年7月25日
                                   島田土木事務所長 渡邉 良和

 お問合せ先

  静岡県交通基盤部 島田土木事務所
  〒427-0019 島田市道悦5丁目7番1号
  電話番号:0547-37-5272
   FAX:0547-37-6183
  E-mail:shimada-kikaku@pref.shizuoka.lg.jp

   

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